2021.02.02

開催レポート|エンジニア採用を語る会

2021年1月26日(火)に開催したオンラインセミナー「エンジニア採用を語る会」の開催レポートです。

登壇者自己紹介

阿部 友暁
BULB株式会社 代表取締役社長

高校卒業後、日本初のネットラジオサービス「ねとらじ」開発(2004年にライブドア社に売却し自身も入社)、デジタルサイネージシステム開発ベンチャー創業と、IT畑を転々としてきた。Uhulu株式会社のCTOとして、社員3名から300名規模になるまでの7年間採用に携わり、知見を養った。現在もBULB社代表として、採用に関与している。スタートアップの開発支援等も行っている。

ファシリテーター

愛宕 翔太
コデアル株式会社 CEO

働くをもっと自由に。
即戦力エンジニア採用のプラットフォーム「CODEAL( http://codeal.work )」運営。
Twitter( @shotaatago )、ブログ( https://note.mu/shotar )では、エンジニアの採用やリモートワークを支援するためのノウハウや日々の思いを発信中。

(1)エンジニア採用における採用フローはどうしているか?

愛宕)まずは採用におけるフローをお伺いします。

阿部さん)そんなに変わったことはやっていません。自社のエンジニアにはできるだけ開発に集中していてほしいので、基本的に1次面談は私が行い、2次面談を現場のエンジニアにお願いしています。3次面談を実施することもあります。

愛宕)選考の中ではコーディングテストも実施していますか?

阿部さん)よくやります。社内のエンジニアがテスト課題を作り、候補者にライブコーディングしてもらいます。成果物というよりは、考える過程を見ることが目的です。何を調べるか、エディタをどう使うか、どういう環境設定をしているか、などに着目しています。
課題の内容はそのときによりますが、基本的に汎用性のあるものを作ってもらう形です。候補者のキャリアを踏まえて、強みや売りを見せてもらえるような課題を作成することもあります。

愛宕)面談の際には何を重視していますか?

阿部さん)カルチャーフィットするかどうかです。純粋な技術力そのものよりも、一緒に気持ちよく仕事ができるかどうかを重視します。お互いにギアを噛み合わせて、高いパフォーマンスが出せるかが大事ですからね。

愛宕)候補者のポートフォリオはどういったところに着目していますか?

阿部さん)求人サイトのプロフィールの書き方ひとつで、人となりについて多くのことが分かります。情報量の少ない謙虚な方もいますし、携わったプロジェクトについて逐一長々と書く方もいます。謙虚すぎるのも問題ですが、後者は実績を「盛っている」ような印象を受けることがあります。
余談ですが、アイコンがアニメキャラの人は敬遠してしまいますね。限られた情報で自分をアピールする場のはずなのに、顔を出していないのではアピールになりません。趣味の場なら構わないのですが、仕事を探す場でおふざけ感を出すのは好みません。

参加者)個人的にはアニメアイコンもひとつの個性として尊重していますが、確かにカルチャーフィットを測る際の指標のひとつになるかもしれませんね。

参加者) 常々構造的思考力のある人を採用したいと考えています。だらだら話すのではなくポイントを押さえて話をしてくれる人のほうが業務能力が高いように思いますし、私の思考とも噛み合いやすいです。構造的思考力の有無は履歴書の書き方で如実に分かるので、阿部さんのお話には納得感があります。

阿部さん)良いプロフィールだと、最初の数行を読めばその人のことが概ね理解できます。経歴も、1職歴1~2行で取り組み内容がコンパクトに記載され、追加情報を知りたい場合はリンク先にアクセスすればいいようになっている。構造的に美しくまとまっていて、仕事ができる人だろうなという印象を受けます。「構造的思考が重要」というご意見には共感します。

愛宕)短ければ短いほどよい、というわけでもないですよね。

阿部さん)はい、長くても分かりやすい書き方になっているものもありますからね。

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参加者)候補者のキャリアビジョンはどの程度重視していますか?面談ではこれまでの経験やスキル面を聞くことが多く、将来について深堀りすることは少ないのではないかと感じています。

阿部さん)面談ではほとんど聞きません。弊社に在籍する期間にも長短ある中、個人のキャリアビジョンやその過程を共有することでチームとして効果が得られるケースは少ないと考えているからです。そもそも明確なキャリアビジョンがある方も多くない印象です。

愛宕)プロフィールにキャリアビジョンを書いている求職者はどのくらいいるんでしょうか?

阿部さん)ほとんどいないと思います。体感では5%以下ですね。でも、さっき「良いプロフィール」として例に挙げた候補者は、明確に記載していました。エンジニアとしてのキャリアというよりは人生設計に近いものでしたが。

(2)エンジニア受け入れの際の具体的な手順はどうしているか?

愛宕)次に、内定から受け入れまでの流れをお伺いします。

阿部さん)内定を出すかの判断においても、カルチャーフィットを最も重視します。私だけでなく、実際に現場で一緒に働くことになるエンジニアがどう判断するかも、もちろん重要です。

愛宕)実際に業務を始めてもらうにあたって、お試し期間のようなものは設けていますか?

阿部さん)必ずお試しから始めてもらっています。お互いできるだけ柔軟に対応できるようにし、時間の無駄を避けるためです。業務開始後2、3日でお互い「合わないね」となるパターンもありますから。お試し期間はだいたい2週間から1ヶ月を想定していますが、内定者の意向も伺います。正社員希望の内定者も、まずは業務委託からスタートです。

愛宕)お試しの実施と期間についてはどのタイミングで候補者と擦り合わせていますか?

阿部さん)面談中に握ってしまいます。

参加者)わが社でもお試し採用は実施しています。期間は長くて半年程度ですが、実際に半年働いてから「やっぱり合わない」と物別れになるパターンが続きました。副業から本業にシフトしてほしいというオファーは難易度が高いと実感しています。

阿部さん)副業で、週末だけまたは夜間だけの稼働を希望する人は採用しないことにしています。フルコミットで参画希望の人にフルコミットでお試ししてもらうのが基本です。
弊社での業務が副業であっても、本業と同等程度のコミット、つまり週2.5日以上の稼働をお願いしています。片手間で業務に当たってもらっては、マネジメントコストがかさむだけですから。

愛宕)阿部さんには日ごろからコデアルをご利用いただいていますが、お話しの通りの使い方なのを拝見しています。もともと副業向けサービスとして始まったコデアルですが、今はフルタイムの求人が増えました。やはり一定以上のコミットメントがないと仕事を任せられないという面があります。

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業務開始時、いわゆるオン・ボーディングにあたって、なにか工夫していることはありますか?

阿部さん)業務ツールとしてSlackを使っており、その中にオン・ボーディングのためのチャンネルを作っています。参加すると、botから必読ドキュメントがシェアされて、知っておくべきことややるべきことが示されます。採用の合意が取れた段階でSlackに招待して、実際の業務開始までにドキュメントに触れておいてもらう形です。
業務開始初日には、人事や現場の担当者との面談を設けています。初日か翌日には、私との面談もあります。その後も定期的に、ヘルスチェック的な振り返り面談の機会があります。

愛宕)Slackの機能をうまくお使いですね。必読ドキュメントの整理は誰が行っているんですか?

阿部さん)最初のうちは私がやっていました。今は、人事や現場の担当者が気づいたときベースで更新しています。基本的にDocBaseを使用しています。

愛宕)マークダウン記法に対応しているのは、エンジニアからするとポイントが高いですよね。コデアル社内では、マニュアル等のドキュメンテーションにはesaを使用しています。

阿部さん)うちでも以前esaを使っていました。

参加者)わが社ではNotionを使っています。使い勝手抜群ですよ。

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参加者)お試し期間にもPCを貸与していますか?わが社でも業務委託でのお試し期間を設けているのですが、その期間中はご自身のPCを使ってもらい、正社員になったタイミングで貸与に切り替えています。一方、エンジニアはキーボード配列などにこだわりがある方も多く、ご自分のPCのままで正社員になるケースもありました。

阿部さん)お試し期間には貸与していません。「前職では貸与PCを使用していて直近の作業環境がない」と言われた際に、たまたま社内で余っていたPCを貸与した実績はありますが、体制としてはまだ整備できていません。

愛宕)上場を念頭に置く場合、情報セキュリティ関連の内部統制にも留意する必要がありますね。G Suite等のアカウントで統一管理するというのも一案です。

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愛宕)受け入れの際の条件調整はどのようにしていますか?

阿部さん)報酬については、金額レンジに応じた役割期待の基準を表にしたものを作りました。面談の際に、候補者にもその表を共有して調整しています。

愛宕)何段階くらいあるんでしょうか?

阿部さん)基本的には時間単価が1000円~5000円まで、1000円刻みの5段階です。例外的に、例えば単価10000円を希望する人にはどういう能力・役割を求めるかという基準も一応あります。AIエンジニアなどの高い専門性があるスーパースター級の人材はプライスレスと考え、高単価で合意する可能性もありますからね。

愛宕)社内での役割はどのように分かれているのでしょうか。

阿部さん)上から、ビジネスオーナー、PM、テックリード、エンジニアという構造になっています。入社してから役割が上昇・変動したり、キャリアチェンジしたりすることはあまりありません。

愛宕)新卒採用も行っていないんですよね?

阿部さん)はい。過去には新卒を取っていたこともありますが、我々の規模ではどうしても教育体制が不十分になりますし、リモートワークではなおさらです。その点は課題と認識してはいます。

愛宕)ベンチャー企業で新卒をエンジニア採用するのは難しいという実感があります。過去に、理系の大学院生等を対象にしたエンジニアインターンを運営していたことがあるんですが、そういったインターン経験者は結局大手企業から内定が出て、そちらに就職してしまうんですよね。

参加者)エンジニアインターンを受け入れているベンチャー企業がそもそも少ないですね。学生側も修行のつもりで参加している面もあり、工数をかけても採用に繋がらない傾向がありそうです。

(3)受け入れ後の振り返りの機会をどのように設けているか?

愛宕)業務開始後、評価の場や振り返りの場はどのように設けていますか?

阿部さん)初期の振り返りとしては、1か月経過時点で面談をします。私や現場のエンジニアではなく、人事担当者が第三者目線でフラットに話を聞くようにしています。直接話しにくい内容や万一のトラブルをキャッチアップするための機能として、うまくワークしていると感じています。
査定面談は、30人程度の規模の組織であることもあり、こちらからは行っていません。自己申告制査定です。

愛宕)中立的立場の人が面談を行うのはユニークな取り組みですね。

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愛宕)基本的に全員リモートワークの会社だと伺っていますが、メンバー同士がオフラインで集まる機会はありますか?

阿部さん)物理で合宿やBBQを行うこともあります。ただし、ここ1年ほどはコロナの影響で実施していません。個人的に会いに行ったりプロジェクト単位で打ち上げをしたりはしていますが、全メンバーが揃う機会は設けられていません。

参加者)わが社でも毎日の朝礼・月末の締め会は実施していますが、すべてリモートです。コロナ禍以前、最後に全員で物理的に顔を合わせたときはメンバー20人の会社でしたが、今では50人規模になっています。リアルで一度も会ったことがないメンバーはたくさんいます。

参加者)「主要メンバーのみ」とか「プロジェクト単位」で物理ミーティングをやることはありますが、全員で集まることはありませんし、そのメリットもないと考えています。
ただ、直接顔を合わせることにメリットがあるケースもあります。ジュニアメンバーが多く、テキストベースのコミュニケーションだけでは自走が難しい場合などには、やはり時々顔を合わせてフォローやキャッチアップをすべきだと感じています。

愛宕)テキストベースでのコミュニケーション能力があれば、完全リモートでもOKなのでしょうか?それとも、やはり心理的には対面で会った方がいいとお考えですか?

阿部さん)会うことが必須だとは思いませんが、会うことの付加価値は確実にあるでしょうね。

参加者)私は会いたいタイプです。弊社の若いメンバーからは、「家の電気代が高くなってしまったので出社したい」なんて声も上がっています。出社する/しないの判断は、基本的に個人に任せています。

参加者)フォローしないといけないメンバーがいるなら会った方がよく、各自方向性が見えており自走できているならリモートでいいと考えます。弊社では、採用面談もすべてリモートです。
ただ、実際に会わないと確認できないことのひとつに、全体のバランスがあります。例えば、足に障害のある方の場合、先方から申し出がない限りリモート面談では気づくことが難しく、必要な配慮ができずにミスマッチに繋がってしまうことがあります。

参加者)わが社は現在組織立ち上げフェーズなので基本的には出社ですが、緊急事態宣言下、出社を通常の30%に制限しました。でも、メンバーはみな出社したがっています。仕組みが固まっていないことも多く、対面でコミュニケーションしないと齟齬が出かねないためです。組織のフェーズによってバランスの取り方を変える必要がありますね。また、コロナに対する価値観も人それぞれですから、柔軟な対応が必要かもしれません。

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愛宕)参加者の皆様から活発にご質問やご意見をいただき、私としても多くの学びがありました。皆さま本日はご参加どうもありがとうございました!

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