2021.02.26

開催レポート|エンジニア採用を語る会 第2回

2021年2月18日(木)に開催したオンラインセミナー「エンジニア採用を語る会 第2回」の開催レポートです。

登壇者自己紹介

民輪 一博
K.S.ロジャース株式会社 代表取締役

大学在学中にスタートアップを立ち上げるなど、CTOとしてキャリアを積んできた。コロナ禍以前から、一人の人が複数の会社に所属する社会になっていくと予想。副業・リモートワークが普及し、東京から地方へ人が動いていくだろうと考えている。地方でも新規事業や新しいスタートアップが産まれるような社会的なインフラを作りたい。
代表を務めるK.S.ロジャース株式会社は、現在4期目で、非エンジニアも含めて110名程度の規模。顧客はベンチャーから大手まで様々だが、技術目線での支援が多い。自社のオフィスはなく、フルリモート・フルフレックス勤務を導入しており、雇用形態も自由に選べる。自由な働き方を促進していきたい。
コデアルの愛宕とは前職時代から付き合いがあり、コデアルのサービスも、UIが刷新される前から使っている。

ファシリテーター

愛宕 翔太
コデアル株式会社 CEO

働くをもっと自由に。
即戦力エンジニア採用のプラットフォーム「CODEAL( http://codeal.work )」運営。
Twitter( @shotaatago )、ブログ( https://note.mu/shotar )では、エンジニアの採用やリモートワークを支援するためのノウハウや日々の思いを発信中。

(1) 採用時の具体的な手順

愛宕)まずは選考フローをお伺いします。

民輪さん)応募→プロフィール選考→1次面談→2次面談、という流れです。1次面談では、パーソナリティーも見ますが、スキル面を重視します。2次面談で、性格面やエンジニアとして目指すところ、キャリアプランを深堀りしています。キャリアプランに関して問うと言葉に詰まる人もいるのですが、今後エンジニアとして何をしたいか、どう成長していきたいかは明確にしておいてほしいですね。
日程調整はチャット上ではなく、TimeRexeeasyなどのカレンダー連携予約ツールを使い、コミュニケーションコストを下げています。

愛宕)コデアルを通しても多数採用いただいていますが、年間何名ほど応募がありますか?

民輪さん)年間700~1000人程度の応募がありますが、相当数を書類選考で振るい落とします。1次面接は効率化を進めており、YES/NO形式の質問リストに沿って30分程度スキルチェックをします。話が盛り上がると1時間ほどになる場合もありますが、そういう人は2次面接を待たずして採用決定、というパターンですね。面談の中では、会社への興味の度合いを測るため、応募者から質問を受け付ける機会も設けています。ご自身のこれまでの経験を踏まえ、当社の開発スタイルにマッチするかどうかを問われる方などがいます。
前職を合わせると、面接してきた人数は延べ1000人ほどです。300人を超えたあたりから定型化できるようになってきました。実際に採用を担当している知人たちに話を聞いても、同様の感覚のようです。

面接時の質問リスト

愛宕)面接時の質問リストを作成されているというのは興味深いですね。具体的にどのような質問があるんでしょう?

民輪さん)かなり技術寄りの話が多いですよ。冒頭で面接の目的や全体の流れを言語化しておき、その後にPHP、Rails、iOSなど個別の技術ごとの質問事項を置いています。

図1: 実際の質問リストの「README」

参加者A)我が社でも面接時の質問リストがあります。外国人エンジニアを募集した際に、500名程度から応募があり、数10名の面接をする必要があったため、効率化・自動化目的で作成しました。内容としては、コーディングテストのチェックポイントに加えて、「直近でスペシャリティを上げるために取り組んでいること」、「今後6か月で目指すところ」、「この仕事への意欲」などです。

愛宕)外国人エンジニアの採用とのことですが、何か気を付けていることはありますか?日本人エンジニアとの違いはあるんでしょうか?

参加者A)ジョブディスクリプションの明確化は日本人相手の場合よりも重要ですが、スキルチェック等の手順は変わりません。外国人はトーク力が高い傾向があるので、実力の見極めが大事ですね。

参加者B)Aさんの会社の質問リストでの、「直近でスペシャリティを上げるための取組み」「今後6か月で目指すところ」などは、より高い意識が求められ、応募者からすると答えるのが難しそうですが、どの程度回答が得られていますか?

参加者A)我が社はスタートアップなので、意欲的なファストラーナーを求めています。直近で習得した新規技術や、異なる分野へのチャレンジなどを話してほしいですね。書類選考を経ているので、面談する応募者の7割程度はきちんと回答してくれます。

(2) 受け入れ時の具体的な手順

愛宕)次に、内定から受け入れまでの流れをお伺いします。

民輪さん)まずはNDAを締結してSlackに招待し、パブリックな話題のチャンネルに自由に入っていってもらいます。受け入れに関してはすっきりした仕組みが出来上がっていますが、受け入れ後にどうキャリアを形成していくかを調整する方が難しいと感じています。

メンバー同士の信頼関係構築方法

民輪さん)当社では働き方に関するガイドラインを事細かく設けており、会社として価値を置いていることや、働く側に重視してほしいことを明記しています。完全フレックスで、業務時間も自己申告制なので、個々人にとって最もパフォーマンスの上がる働き方ができます。自由度が高い分、アウトプットを徹底することが求められます。
また、それぞれのメンバーの稼働状況をクリアにするため、全員に週報を上げてもらっています。
当社は会社の形を取ってはいますが、文化的にはコミュニティとしての要素を重視しています。社外からも、「オープンソースのコミュニティのような会社」と評されたことがあります。近しい価値観をもつコミュニティである分、その価値観を共有できない異分子に対しては、拒否反応を起こします。チームビルディングにおいてはお互いの信頼関係が重要ですから、アウトプットが不足していると感じられた場合、周囲の構成メンバーは敏感に反応します。

愛宕)メンバーの信頼関係醸成のために取り組んでいることはありますか?

民輪さん)エンジニアが90名ほどいますが、全員の技術スタックやスキルを事細かく把握しています。具体的には、カオナビを使用して社内名簿を作成し、各自のバックグラウンドを共有しています。オフラインで会うことがないので、プロジェクトのキックオフ時には必ずZoomを繋ぎ、カオナビを見てあれこれ言い合いながら顔合わせをします。

愛宕)カオナビでは、どういう項目を入力してもらっていますか?

民輪さん)バックグラウンド把握のため、経歴は必ず入れてもらっています。人柄を知るために趣味なども書いてほしいですね。過去の経歴に関してどこまで遡るかや、どの程度の粒度で入力するかは個人に任せているので、記載度合いが濃い人もいれば薄い人もいます。できれば濃く書いてほしいんですが、強要できるものではないので、どうモチベートするかが今後の課題です。カオナビから自社開発のシステムに移行することも視野に入れています。

社内ガイドラインの作成・メンテナンス

民輪さん)メンバー間でタスクを依頼する際の項目や手順も具体的に言語化しています。ガイドライン類はGitLabを使って管理しており、メンテナンスは100%私が対応しています。

愛宕)ガイドラインが丁寧に言語化されていれば、働く場所や時間帯がさまざまでも安心ですね。

参加者)私も過去にガイドラインをすべて作成したのですが、運用が変わってきたときにアップデートが追いつかず、旧版のままになっています。メンテナンスは大変ではないですか?また、どういったタイミングで更新されていますか?

民輪さん)ガイドラインの作成・メンテナンスが組織運営の生命線だと考えているので、どれほど面倒だなと感じても絶対にやると決めています。睡眠を削ってもメンテナンスをする覚悟ですね。

愛宕)メンテナンスをルーティン化するためのコツはありますか?

民輪さん)社内で運用していて何か問題が起きたときに、すぐにその点に関し議論してその場で修正を入れることで、確実に更新しています。今では更新は2~3ヶ月に1回程度なので、随分楽になっています。創業初期は、社内のルールが固まっておらず人員も少なかったため更新が大変でしたが、信念を持って乗り切りました。前職時代にベースとなるベータ版を作っていたのも活きました。

エンジニアにとっての仕事のモチベーション

参加者)業務委託で働きたい求職者が多く、正社員として働いてほしい企業にとって母集団形成が難しくなっていると感じています。以前は採用関連のイベントなども実施していたものの、コロナ禍で難しくなりました。「夢溢れるサービスを開発している」といったキャッチーさがあれば応募者を集めやすいのでしょうが、事業の内容を求職者にどうアピールすればよいか悩むことも多いです。
民輪さんの会社では年間1000名近いの応募があるとのことですが、応募者はどういったところに魅力を感じているのでしょう?

民輪さん)エンジニアにとって仕事のモチベーションとは何なのかを意識する必要がありますね。これについても過去に作成した資料があるのでお見せします。

愛宕)民輪さんはドキュメント作成・管理を本当に徹底されていますね…!

民輪さん)エンジニアの働くモチベ―ションに関して、報酬は当然ですが、成長環境労働環境も非常に重要です。企業としては、1on1などを効果的に実施して成長を促す環境を提供することや、フルリモート・フルフレックスなど自由な働き方、雇用形態を許容することで、求職者から見たときの魅力度が増します。当社はベンチャーなので0→1支援案件が多いのですが、エンジニアがモチベーションを上げられるようなSaaSプロジェクトもあります。
報酬面では大手には勝てませんし、実際に社内アンケートで報酬について聞くと、5段階評価で3程度でした。一方、労働環境については4.8、成長環境も4点代後半という数字が出ています。その部分が当社の強みであると認識していますし、実際に応募者やメンバーから評価されているポイントでもあります。

図2: エンジニアが働くモチベーション

(3) 受け入れ後の振り返りの機会の設け方

愛宕)受け入れ後の振り返りの機会についてお伺いしていきます。成長環境のところで1on1という話が出ましたが、実施されていますか?

民輪さん)私や直属の上司ではなく人事担当者が担ってくれており、全員に対し週1で必ず行われています。人事担当者と役員とのコミュニケーションチャンネルで、内容もすべて履歴を残しています。特に「こうしよう」と決めたわけではなく、自然な流れでそうなりましたね。マイクロマネジメントをしない会社である一方で、開発スケジュールはきちんと決まっていることもあり、ウェットなところから事務的なところまで抜け漏れなく網羅的に見てくれる人は必要です。そこを人事担当者に担ってもらっています。目指すところを人事担当者に伝えてはいますが明確なガイドライン等はなく、人事担当者の属人的な業務になりつつあることを課題だとは思っています。

愛宕)報酬はどのように定めていますか?

民輪さん)正社員だけでなく、フリーランス・副業の人に対してもしっかりとスキルに見合った給与テーブルを作っています。逆に、その給与テーブルに合わない人は採用しないし契約を継続しません。税引き前の金額なので、雇用形態は各メンバーに任せています。正社員は年1回、業務委託は月1回の査定で、上がることも下がることもあります。運用には煩雑な面もありますが、近ごろは査定が変動する人が少なくなり運用しやすくなってきました。

業務委託から正社員への切り替え

愛宕)110名程度のメンバーがいるとのことでしたが、正社員・業務委託の比率はどのようになっていますか?

民輪さん)正社員の比率が圧倒的に少なく、10%程度です。ほぼ全員がフリーランス・副業からのスタートです。

参加者)なぜエンジニアには業務委託希望が多いのでしょうか?

民輪さん)売り手市場なので、いろんな会社でいろんな仕事がしたいというのが大きいでしょう。業務委託で複数社掛け持ちして稼ぎたいというエンジニアもいますが、お金だけがモチベーションではトラブルが起きやすくなるので、当社では採用しません。面談で、会社に求めるものや成長目標等をしっかり聞くようにしています。

参加者)正社員の方々にとって、業務委託から正社員に切り替えるという意思決定のポイントとなったのはどういうところだったのでしょうか?

民輪さん)会社側から口説きに行ったというのが正直なところです。本人から正社員希望という声が上がることはほぼないので、もっとコミットしてほしいと感じたら会社から正社員への切り替えを提案します。いわば営業ですね。ウェットに、「ちょっと飲みに行こうぜ!」から始まる話です。

会社へのロイヤルティの高め方

民輪さん)1人の人が複数の会社に所属すると、それぞれの会社の業務への脳内リソースの配分にばらつきが出ます。できるだけ当社に脳内リソースを割いてほしいと考えています。
会社とメンバーとの関係も、ロイヤルティ・ピラミッドのような階層構造になっています。業務委託では、積極的に関与してくれる人もいれば受け身の人もおり、会社へのロイヤルティにばらつきがあります。相対的にロイヤルティの低い第3階層を上げていく施策として、コミュニティを活性化させるための専門部署を作り、試行錯誤しています。上げるノウハウはだんだん蓄積されてきたので、さらにスピードアップしたいですね。コミュニティのような会社として、他社に比べると変わった人事をやっているなと思います。

愛宕)うまくいった施策はどのようなものですか?

民輪さん)新メンバーのウェルカム飲み会は効果が高かったです。逆に、うまくいかなかったのはランチ会ですね。自由な働き方のパラレルワーカーが多いので、ランチのタイミングが合わないんです。

提供したいのは、CTOを目指せる環境

参加者)成長環境を提供することが重要というお話がありましたが、具体的にどういう環境を作っていますか?

民輪さん)当社のミッションはCTOを生み出す会社になることなので、当社における成長環境とは、CTOを目指せるような環境だと考えています。言われたことをやるだけではだめで、どう成長していきたいかを自律的に考えていってほしいです。

愛宕)全体を通して、ドキュメンテーションにかなり労力を割き、言語化されたガイドラインを整備している印象を受けました。これがいわば「CTOになるための参考書」になっているかもしれませんね。

参加者)民輪さんの考えるCTO像とはどのようなものでしょうか?

民輪さん)CTOの要素を36分解してメンバーに展開しており、どの項目をどのレベルまで満たせているかをそれぞれにフィードバックしています。エンジニアチームをリードするにあたって、要素は3つあります。3要素すべてをこなせる人が理想のCTOと言えるでしょうが、個々人に特化ポイントがあってよいと思います。プロダクトサイドで開発を主導するのが得意ならばVPoPを目指すのがいいでしょうし、採用・育成といったタレントマネジメントが得意ならばVPoEを目指せばいい。それぞれの人材がどこを目指していくかを丁寧にコミュニケーションする必要があります。

図3: CTO/VPoP/VPoEの役割の範囲

愛宕)民輪さんのお話を伺って、社内の手順を言語化しガイドラインを作成しておくことの大切さを改めて感じました。皆さま、本日はご参加、そして活発なご質問やご意見をどうもありがとうございました!

▼本文中の図2及び図3は、民輪さんからご共有いただいた以下スライドから抜粋しました。
フルリモートで事業にコミットするエンジニア組織とは

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