2016.09.13

失敗しても大丈夫な準備をしてから挑戦しよう:ジョイズ株式会社柿原さんインタビュー

今回はジョイズ株式会社CEO兼CTO、柿原祥之さんとコデアル株式会社CEO愛宕の対談インタビューです。

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愛宕 最初に御社のサービスを紹介していただいてもよろしいでしょうか。

柿原 TerraTalkという英会話のアプリを作っています。特徴は、単語や文法を要素要素で学ぶだけではなくて、ミッションベースでロールプレイングのレッスンを受けることができます。「英語の先生をソフトウェアで再現する」というコンセプトを掲げています。話すだけでなく、指導もできるように開発を行っています。

terratalk
参照:https://www.terratalk.rocks/

愛宕 私もダウンロードしてやってみました。シチュエーションに合わせて学べるところと、自分のレベルを教えてくれるところがいいですね。

会社として、「使える」データが重要

愛宕 AI相手なので話し放題といったことをうたっていますが、かなり技術的にチャレンジングではないですか? どのようなシステムを作っているのでしょうか。

柿原 アプリなのでAPIサーバーがあって、一方言語処理系のサブシステムがマイクロサービス的にぶら下がっています。運用面でできるだけ楽をしたいので、Herokuに乗っかるものは持って行くのですが、一方ディスクやメモリの要件があって柔軟性の担保できないものはEC2でやって使い分けています。

愛宕 何を作るかは柿原さんが決めていらっしゃるのでしょうか。

柿原 そうですね、データが重要な会社なので、データが集まらない作り方はしたくないです。事業的な戦略・ロードマップから引っ張ってきてインフラやアプリの制作を決めています。

愛宕 私もデータ解析をやったことがあるのですが、処理するにあたって適切な形ではないデータだと、あってもどうしようもないことがありますよね。

柿原 会社としてデータとアルゴリズムと実装と三つが揃わないといけませんが、法人として囲えるのはデータだけなんですよ。実装の手法は新しいものが出てくるし、アルゴリズムはコモディティ化しているので。だから使えるデータが重要なんです。

柿原さんのこれまで

愛宕 この会社の前はどのような仕事をやってこられたのでしょうか。

柿原 大学の途中にUKの気象庁で、データの解析と可視化をやっていました。大学も物理学で、数値計算やシミュレーション系のバックグラウンドがあります。そしてソニーに入ったのですが、カーナビソフトウェアの開発をやっていました。GoogleのAndroid Autoや、iOSのCarPlayの前身となるような技術の標準化・企画策定をやっていました。どちらかというとR&Dよりのことをやっていました。

愛宕 ソニーを出て自分でやろうという意志はもともとあったのでしょうか。

柿原 決めたのはもちろんソニーをやめる直前ですけれども、起業や、事業を起こしたいという漠然としたイメージは昔から持っていましたね。

愛宕 UKにいた時、ソニーにいた時どのような働き方をしていたのでしょうか?

柿原 UKの気象庁はすごく環境がいいんですよ。オフィス外観もすごいし、半民営なので公的機関的な固さがあって残業全くできませんでした。落ち着いて仕事したい方には最高の環境です。

ソニーにいた時は標準化の仕事をやっていて、自動車会社や携帯会社など関連会社と集まって決めていかなきゃいけないので、二ヶ月に一回くらいはドイツかアメリカに出張していました。その他にテレカンを週3回くらい、早朝か深夜にやっていました。

多様性を認めるために、共働きをサポートし、採用に力を入れたい

愛宕 柿原さんの今までのキャリアを踏まえて、今の20・30代の働き方はどうなっていくと思いますか?

柿原 未来予測/うちがどうしていくのか/どうなっていくべきかについて答えなければいけないと思います。

未来予測に関しては、エンジニアに限って言えば、需給の関係で(労働力の供給が需要に比べて少ないせいで)、いいエンジニアを求める職場がどんどん増えていきます。給料がよく、いい機材を揃えた職場が最低ラインになります。一方でエンジニアの二分化が起こります。リモートワーク・副業・共働きによって流動性が高まると、会社が囲い込みをしにくくなります。その結果、給料の傾斜がすごくつくので、いい環境で稼げるエンジニアと、そうでない人との差がとても開きます。

そこで、労働力の供給を増やすために企業がどういう意思決定をしなければいけなくなるかという話になりますが、うちの話をします。うちはリモート比率が高いですが、リモートワーク・副業は個々人の能力の問題だと思っています。それよりは、共働きをしたい人ができるというのが重要ですが、そのために経営体力をつけて、共働きをサポートできる企業にしたいと思っています。年配の年代を中心に。共働きをするのはかわいそうねという文化的な考えがありますが、このステレオタイプがネックになってくるかなと思います。

ポイントは多様性を認めざるをえないケースをいかに作るかです。立法するか市場原理のどちらかですが、僕らのように市場原理でやるなら、でかい会社を作って、人をごっそり採用にできるようにしなければいけません。ここ5年10年でエンジニアの待遇が改善したのは、GREE・DeNA・楽天のおかげだと思うんです。実はエンジニアやデザイナーは需給の関係で強い立場で、どう考えても恵まれているので、もっと強気でいいと思いますね。

愛宕 面白い指摘ですね。興味本位ですが、逆に恵まれていない仕事でいうとどうなりますか?

柿原 会計士や行政書士などは難しいんじゃないかなと思いますね。前提知識が必要だったから資格で守られていますが、データが構造化されてIT化されると、必要がなくなっていく気はしますね。会計でも経営的なコンサルのできるような人たちは大丈夫だと思いますが。

スキルの準備ではなく、失敗しても大丈夫な準備をしてから環境を変えよう

愛宕 最後に、これからエンジニアはどうすべきか、という話をしたいです。海外で仕事をしたり、海外に出て仕事をする機会を得るにはどのようにしたら良いのでしょうか。

柿原 最近面接した人の中にこういう人がいます。中国の人ですけれども、外で働く決断をして、すでに会社を辞めています。エンジニアだったら海外で働くことはできるので、あとは決めの問題だと思っています。決めるために自信をつけたいのであれば、ワールドワイドでやっているクラウドソーシングのサイトがあるので、そこで仕事を取ればいいです。

思うのは、良い準備をすることはできますが、準備はいつまでたっても本番ではない、ということです。先に環境を作るのが大切だと思います。うちの会社はTerraTalkで実現したいのは、地球上で意思疎通できる人を増やすということですが、会社としてその価値観を体現しなければいけないと思っているので、日本で働きたいという海外のエンジニアは積極的に採用しますし、多様な人のいる環境で働きたい日本人の要望にも応えたいと思っています。うちと同じように多様な人のいる環境は東京にもあるので、入ってみるといいと思いますね。

変化が欲しいと思っている人は、まず環境を変えるのがいいと思います。ただ、一回くらい失敗しても、一年くらい無駄にしても大丈夫なくらいな蓄えをしてからにしましょう。スキルや必要なことを準備してから入るのは無理なので、失敗しても大丈夫な準備をしてからリスクをとるといいですね。

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