今回はChatWork株式会社 代表取締役の山本さんに、シリコンバレーのプラグアンドプレイにてインタビューさせて頂きました。サービス精神溢れる山本さんの濃い話を前後編に分けてお送ります。

前編 チャットワークができるまでと、プロダクトの広め方

愛宕 最初に、もう知らない人はいないかと思いますが、御社で提供している製品の話と、事業についてお話頂けますか。

山本 チャットワークというビジネスチャットサービスをやっています。機能としては、チャット、タスク管理、ファイル共有、ビデオ/音声通話の4機能です。それぞれの位置付けとして、チャットとタスク管理に重きを置いていて、ファイル共有とビデオ/音声通話はそれを補完するものと考えています。
事業としては大きく分けて3つの事業を展開しています。ひとつは、チャットワークはフリーミアムモデルですので、有料アカウントによるアカウント事業です。ふたつめはフリープランでは広告を出しているので、広告事業です。そして3つ目はプラットフォーム事業です。プラットフォーム事業について具体的に説明すると、現在、「ChatWorkアシスタント」というサービスを提供しているのですが、これはオンラインアシスタントをやっている会社様と提携することで、チャットワーク上で様々な業務支援を行うというものです。

愛宕 ありがとうございます。すでに多くの人に使われるグローバルな製品になっていますが、ChatWorkはどんなところから今のような形にしようと考えたのですか。

山本 もともと弊社は2000年頃にホームページの売上アップ支援事業をはじめ、2008年頃から他社様の生産性を上げる事業ーーGoogleAppsの第1号販売代理店だとか、マインドマップやセキュリティソフト等の販売等ーーを行っていました。ただ、一方で自分達のプロダクトが欲しいとも考えていたんです。それで最初はフリーミアムモデルのアクセス解析ツールを作りました。でも、これが大失敗してしまったんです。その後、弊社の専務取締役兼CTOの弟がチャットワークを作りたいと言ってきたのですが、私は最初、これにすごく反対したんですよ。

愛宕 そうなんですか?

山本 ええ。アクセス解析ツールではGoogleに戦いを挑んでボロ負けしました。当時、チャットツールはskypeが強かったのですが、今度はskypeに挑むのかと。前回は2年間、エンジニアもデザイナーもマーケティングも会社のリソースをフル投入して、マネタイズがゼロに近いところで終わった。それでまた、死に行くような戦いをやるのかと(笑)。

そう言って反対していたのですが、当時、skypeは私たちも使っていて、skypeではお互いにオンラインでないとファイル共有できない等の問題がありました。それで、弊社ではskypeサーバーみたいなものを立てて、相手がオンラインになった時にメッセージがあらためて配信されるようにし、当時300社くらいの取引先と全てskypeでやりとりしていました。そういう背景があって、たとえチャットワークが製品として広まらなくとも社内ユースだけで相当便利になると言うんですよ。

それで、私も、そこまで言うなら分かったと。代わりに社内リソースはいっさいやれないから、一人でやってくれと。そこから半年くらいたってα版みたいなものができて、2010年の後半くらいに、社内で一斉に切りかえたんです。
切り替え当初はバグが出た、あれが出来ない、これがやりたい、とフィードバックが大量に来たのですが、なんとか対応して、日々リリースしていましたね。それで、当時はUstreamが流行っている時期だったので、私はUstreamでツールやその使い方を見せて販促する、テレビショッピングみたいなことをやっていたんです。そこでチャットワークを紹介したところ、ものすごくコメントがつきました。それで「よし、出すぞ!」という話になったんです。
出すにあたっては、前回の反省を生かして最初からマネタイズを考えていました。日本のスタートアップではよくユーザーがついたらマネタイズしよう、という考えでやるところが多いと思うのですが、それだと遅いんですよね。

愛宕 確かにユーザーがお金払って使ってくれるか、というところを検証してないというのはわりと致命的ですよね。無料だったら使いたいけど、有料だったらいいやってなりますよね。

山本 そうです。ですから、次は最初から有料版を出すぞと。正月もディスカッションをしてそういう風に決めました。

愛宕 しっかり前回の失敗を次に生かしているんですね。お話を聞いていて思ったのは、元々は企業の生産性をあげようという提案をしていて、解決手段が変わっただけで、向き合っている顧客は変わっていないというところです。ずっと同じテーマに向き合い続けてきたからこそ、痒いところに手が届くものが作れたのかなと感じますね。

山本 そうですね。創業時から、自分たちが問題だと思ったことを自分達でテクノロジーで解決してそれを提供する、自分達がやったことしか提供しないというルールがありましたね。

愛宕 すごく共感します。私も自分達でドックフーディングしたことしか提案しないですね。コデアルでは、業務委託として一緒に働いてみて30日後に採用を決める、ワーキングリクルーティングというのをやっているのですが、これも面接だけだとエンジニアの良し悪しは分からない、と思っているからです。やはり自分達が信じていないものをお客様に提案しても売れないですよね。

愛宕 最初にプロダクトを出してから、どういったユーザー層に順番に広がっていったのですか。また、広げていくためにどういった活動をしたのでしょうか。

山本 私の場合、当時はEC studioという社名だったのですが、、2003年くらいにSEOツールでは20個以上、世界で一番多いラインナップがあったり、GoogleAppsの第1号販売代理店でマーケティングアワードをもらったり、常に時代の2年~3年先を行くような形でサービスを提供してきたんですよ。それで私のファンみたいな層が一定数いたんですね。紹介するととりあえず使ってみてくれる、そして今でいうエヴァンジェリストみたいな感じで広めてくれるような人達が結構いたんです。
最初はそんな感じで、次はアーリーアダプターに響くようなライフハッカーやGIZMODEやGIGAZINEみたいなところに記事広告を打ったんです。それが大ヒットしました。サインアップがあったらGmailにメールが飛んでくるようにしていたのですが、その記事広告で1日で5000を超えるサインアップがありましたね。これは今でも最高記録です。
あとはオフラインの活動ですね。地方の人たちにはオンラインでいくらアプローチしてもなかなか使ってもらえないことが多いです。また、当時は大阪に拠点を構えていたんですが、地方に行って直接話をしようとしても、都会から営業が来た、みたいな扱いになってしまって、ガードが固くなってしまうケースが多くて。そういったユーザー様の場合、地元の有名な方とか、知り合いが使っていると自分も使う、といった傾向があり、それで、私たちは地方でIT飲み会みたいなこともやっていたので、その地元の主催者の人の口から紹介してもらったりすると、反応が全然違ったりするんですよ。

愛宕 とても共感できます。私も長崎出身なので、東京から営業に来た人間からはとりあえず買わないだろうなというのは感覚的に分かる気がします。あと、私が自社のサービスを紹介してもただの営業だよね、という話になってしまいますけど、実際にコデアルを使っていただいてる企業の方から、うちでもコデアルで採ってるよ、って言っていただけた方が絶対刺さりますよね。

山本 そうですね。良い製品を作れば広がる、というのはアーリーアダプターだけでも十分な人数がいるアメリカならば可能かもしれませんが、国内でやるサービスならば、オンライン上でのアピールだけでは使ってくれないユーザーをどうフォローするか、というのは大切な事だと思います。

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