ChatWork株式会社 代表取締役の山本さんインタビュー後編です。チャットワークは2017年2月末時点で、205カ国と地域、12万7千社以上の会社で導入されています。そんなグローバルなサービスであるチャットワークのプロダクトオーナーである山本さんに、日本とアメリカでのスタートアップの違いについて語って頂きました。

愛宕 売り込み方や波及の仕方で、日本とアメリカでは違いはあるのでしょうか。

山本 まったく違いますね。カリフォルニア、特にシリコンバレーを含むベイエリアは他の地域とはまったく違います。アメリカはやはり大きいので、大雑把に言って都会と田舎でまったく違うんですね。最低2つの国が同居しているような感じがあります。チャットワークでいうと、競合ツールが西海岸で広まっていたとしても、東海岸ではまったく状況が違うんです。ですので、私たちは東海岸を攻めに行ったりしていました。

愛宕 具体的にはどういったアプローチを取ったのでしょうか。

山本 アメリカではBtoBのサービスを取り扱う販売代理店だけで約10万社あります。また、その代理店を取りまとめる代理店協会みたいな会社があります。そういった会社に話を持っていくと、コンサル費用を払うことによって、代理店に支払うマージンや支払い方法、評価の仕方まで、設計から仕組みまで提供してくれるんです。ある程度スキームを決めたところで、代理店の開拓までやってくれる。このタイミングでこのくらいの会社が入ってきたら、3ヶ月以内にこういう行動をしてくれている代理店が生き残っていくはずだから、そこにフォーカスしましょう、というところまで提案してくれる。そういう仕組みが出来上がってるんですよ。こういった仕組みは日本にはありません。こういった仕組みを知らない、向こうでのBtoBでの戦い方を知らないと痛い目を見ますね。

愛宕 売り方、広め方について日本とアメリカで全く違う、という話が出ましたが、プロダクトの内容についても日本とアメリカ、あるいは職種等によって望まれる機能や形って微妙に違ったりしないのでしょうか。その場合にどのような考え方で判断を下すのでしょうか。

山本 私がビジネスを考えたり営業が得意な人間で、作る側の人間ではありません。ですので、ターゲットは非ITのユーザー、という風な基準で考えていますね。ただ、チャットワークは既存のツールが持つ課題に対してどこもやっていない頃に出したプロダクトだったため、そういうツールを一番探していたIT系の企業から広がっていきました。

愛宕 エンジニア視点だったり、非ITユーザー視点だったり、それ自体には正解があるわけではなくて、プロダクトには、そのオーナーのキャラが入りますよね。

山本 そうですね。自分がしっくりくるものであることは大事だと思います。ターゲットが自分とは違うユーザーであれば、どんな性別、年齢、職種、なのかといった完全なペルソナを作って、そこから判断を下すべきだと思います。
ChatWorkでは現在80名程度の社員数になってきたので企画も開発も全て任せてはいるのですが、ユーザーの目につく部分に関しては全て事前に私がチェックして非ITユーザーのフィルターを通してから出すようにしています。

愛宕 チャットワークはすでに非ITユーザーにも広まってきているようですが、最初にITのリテラシーが高いユーザーに広まった後、どのような過程を経てそういった非ITユーザーへと広まっていったのでしょうか。

山本 先ほど説明した地方のIT飲み会では、イベントがあると集まってくる非ITユーザーの方もいまして。というより、地方にはIT企業がなくて、一緒に飲んでいて、IT飲み会だからITの話もしなきゃと思ってすると、そういえばこれってIT飲み会だったねみたいな(笑)。
あとは営業職や士業の方など、社外とのやりとりに使う方々が広めてくれた、というのがありますね。税理士さんの場合、普通に働いていたら20社くらいのクライアントでキャパが埋まってしまうらしいのですが、チャットワークだとメールのように散逸しないですし、ファイルのやりとりもできる、ということで60社くらいまでキャパが広がるらしいんですね。そうすると、士業の方々の先には取引先の会社様がいますから、そこにも広がっていく。そうやって広げていってくれるユーザー様にヒアリングして、その方々に向けた機能を強化していったりしました。

愛宕 その他、日本とアメリカでの違いについて何かあったら教えてください。

山本 そうですね。プロダクトの作り方が違うと思います。シリコンバレーには、たとえば認証機能みたいな、どのサービスでも共通で使えるようなパーツをサービスとして出している企業がたくさんあるんですよ。そういった企業をリストアップして、良いところがあれば使う。

あと、エンジニアさんに響きそうな話として、誰かが何かサービスを出したら、そのサービスの上にさらに乗っかるような形で別のサービスが出てくるので、そういったサービスを使っていくと良いと思います。たとえばAWSが出てきて、特にスタートアップにとってインフラはとても便利になりました。

次に、そのサーバーやサービスを監視するnewrelicやPagerDutyが出てきました。最近では、そういった監視ツールが異常を検知した場合に、異常の8割程度はテンプレ化できるものであることを見抜いて、復旧までほぼ自動的にやってくれるサービスまで出てきています。
シリコンバレーではスタートアップを含め、ユーザーとなるその母数が日本に比べて非常に多いという背景があるためだと思うのですが、パーツやそうしたサービスが非常に豊富で、それらを利用することで、エンジニアの負担が軽くなります。シリコンバレーで日本のスタートアップ方とお話しすると、そういったサービスのことを意外と知らないことが多いように感じます。プロダクトの作り方で、全部自分で作らない、ということは特に日本のスタートアップに広めていきたいなと思います。

愛宕 パソコンも、古くはApple ⅡでもVisiCalcがあったから広がったよね、みたいな話で、上に乗っかるサービスがどんどん出てくることで関わる人たちがみんなハッピーになる上で重要なのかなと思いますね。今回はお時間を割いていただき、貴重なお話を伺えました。ありがとうございました!

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