2018.11.13

複業に特化した税務サポートを提供するV-Spiritsグループ代表中野裕哲さんに税務面で抑えるべきポイントを聞いてみた

働き方改革が進み、複業をする人・考えている人が増えつつあります。さあ始めよう!と思っても、税金や申告など気になることは様々。複業を楽しく行うためにも不安を払拭して始めたいものです。

本日は多くの複業従事者の税務支援を行う税理士法人V-spirits代表を務める税理士中野 裕哲さんに、即戦力の複業求人サイト「コデアル」を運営する、コデアル株式会社代表愛宕より確定申告について・会社への伝え方など複業に関する疑問をお伺いしました。

(執筆:三島 / 取材:愛宕)

複業した時の確定申告

愛宕:複業を始めるにあたってまず気になるのが確定申告だと思うのですが、押さえておくべきポイントはありますか?

中野:会社員の方が複業を行う場合、年間で給与以外の所得(雑所得)が20万円を超えていなければ確定申告は不要です。まずは年間の利益が20万以内か超えているかどうかがポイントになります。

愛宕:なるほど。会社員以外の方の場合はどうでしょうか?「コデアル」のユーザーの方の半数以上がフリーランスの方なんですが、フリーランスの人が複数のプロジェクトを行うという場合はどうでしょうか?

中野開業届と青色申告承認申請書をきちんと出していれば問題ないです。通常は一緒に提出することになります。

愛宕:会社を作るかどうかの見極めは、どのタイミングがいいのでしょうか?

中野:税金的にどちらが得かどうかを見極めのポイントにするといいです。

法人にしてしまえば税率は一定になります。年間利益500~600万円ほど出ているのであれば、法人にしてもいいと思います。ただ会社となるといろいろと経費が掛かることになるのでその部分は考える必要があると思いますが。。

あとは取引先が「会社」でないと発注できないという場合や、その逆で「個人」でなければ発注できないという場合もあります。会社をつくっても個人で仕事を受けるというパターンも多いにあると思います。

愛宕:ちなみに御社V-Spiritsグループにご相談したほうがいいラインはどこでしょうか?

中野:最初にお話した年間20万の所得は、12月末で必ず区切られて所得税を支払うことになります。ただだいたい毎年8月ごろになると、「複業が好調で思っていたより稼いでしまいそう」や「えらく儲かってしまった」といった相談を多く受けます。複業をされている中で“あれ?”と感じたらすぐにご相談いただけるといいですね。

愛宕:御社のクライアント様にはどんな複業をされている方が多いですか?

中野:そうですね…。例えば大手IT企業で勤めながら、あるジャンルの第一人者になっているような方が、本を出版したりWEBライティングをされているというパターンがとても多いですね。分野は開発やプログラミングなど様々ですが。クライアント様の中には複業の本の出版でかなり稼いでおられる有名な方もいらっしゃいます。

愛宕:知っています!有名な方ですよね。その方は何がきっかけで知り合われたんですか?

中野:起業家同士は意外とつながりがあって、そのご紹介がきっかけですね。

会社に許可をもらって複業したい!社内への伝え方のポイント

愛宕:会社勤めの人が複業を始める時に、とても気になることだと思うんですが、そもそも会社で複業が認められているとかの確認以外にも何か大事なポイントってありますか?

中野:実は私、もともと大手不動産会社の人事部にいたんです(笑)

今までは複業は絶対にダメ!という世の中の流れだったのが、働き方改革で突然複業OKになりましたよね。じゃあ今、会社が何をしてくれたら困るかというと、

まずは本業がおろそかになることですね。土日に複業を頑張りすぎて平日勤務中に居眠りしているなどもってのほかですから。後は、本業との絡みでしょうか。本業側の情報が流出したり、営業先に複業の営業をかけたりしないか。きちんと複業との線引きは必要ですね。

どんな仕事でも何かあれば、本業の会社名が出てしまったりするので複業もしっかりきちんと行うことも大切ですね。例えば独立したいと考えている人材紹介業をやっている人が、会社にいる間に見込み客をどんどん作り、先に友人が立ち上げた新しい会社にお客さんを流すこともできてしまうわけです。

愛宕:確かに!モラルの部分は別として、この可能性はありますよね。コデアルも今600社の企業様に使っていただいていますが、受け入れる企業側のみなさまにも受け入れ方に関して、うまくいくやり方をよりシェアできるといいなと考えています。導入事例のインタビューを通じて、実際に受け入れがうまくいっている企業様にお話をお伺いするようにもしています。

中野:今までは絶対にダメだったものが、急に複業していいよ!になったんです。企業側もすべて手探りになりますよね。

愛宕:起業でも似ているところありますよね。自分自身も会社を起業する際、もともといた不動産業界とは全く違う業界の、人材業界で会社を作りましたし。

フリーランスとして複数の案件をこなしていきたい。ただ今の会社を辞めるのも不安。不安を和らげる方法は?

愛宕:多くの複業従事者をご存知の中野さんから見て、金銭的に、タイミング的にいい判断できるポイントや考え方などはありますか?

中野50万の仕事1本か、5万の仕事10本だったら同じ売り上げだけど、本数が全く違いますよね。1本の仕事だとそれがなくなればとたんに食べれなくなるわけです。ビジネスとして数本、異なる様々な内容を積み上げれるようになったかどうかが大切だと思います。

全てではないですが、お金には2つ種類があって①毎月入ってくるものと②入ってこないとしてもどれだけ耐えられるか。耐えれるだけの貯金があるかです。

今、国策でも起業家を増やそうという動きが広がっていて、公的な融資制度を使うこともできるので活用するのも1つの手ですね。 

愛宕:このお話ってフリーランスから会社を作った場合でも変わらない部分がありますね!

中野:同じですよ!複業も同じ。本業の安定した収入(給与)が安心源となり、複業が行えるんです。

夫婦共働きで生活を成り立たせるような働き方の設計とは?

愛宕:夫婦間で家計の分担だったり、どうすれば幸せに暮らしていけるか。中野さんのお考えを聞かせてください。

中野:まずは自分できちんとお金を管理することですね。最低でも家計を管理すること。夫婦でどっちが何を管理しようとか決めるといいんじゃないかなと思います。

じゃないと会社のお金なんて管理できませんよ!あとは夫婦どちらかが安定した収入があるほうがいいですね。

愛宕:ものすごくわかります!!!!私の奥さんは会社勤めなので(笑)

中野:独立しようとして公庫にお金を借りる時に、必ず奥さんの勤め先や給与額、貯金額などが聞かれます。夫婦どちらもフリーランスにしたい場合も同じです。まずはどちらかが安定しているほうがいいですね。 

愛宕:会社の中の役割分担にも近いものがありますね。事務をきちっとしっかりやってくれる人と自由に考え動く人、みたいな感じで。

中野:夫婦で同じ会社で同じ仕事をするのもいいと思いますが、別々の仕事も価値がありますよね。 

愛宕:夫婦間のお金はどのくらい知っていたほうがいいですか? 

中野お互いに借金がいくらあるか・カードをいくら使っているかは最低限知っておいたほうがいいですね。知らないままお金を借りに行って、実はこんなにあって借りれなかった!じゃ遅いですからね。

複業がうまくいっているのはどんな人?

愛宕:これまでいろんな方のご相談に乗ってこられたと思うんですが、こういう人がうまく複業をこなしているなというのは感じますか?

中野:それが好きで得意で“夢中”に楽しんでやっている人ですね。どうしてもお金が足りなくて苦行で複業している人はなかなか続かないですよね。

愛宕:工夫しようとか、もっと良くする為にこうしようとか思わないですもんね。最後に何か中野さんからメッセージがあればお願いします。

中野:専門家と聞くととても怖いイメージを持っている方が多いみたいなんですが、気軽に何でも質問してもらえればと思います。どんな些細なことでも相談してもらって、楽しく複業してもらえたらいいなと思います。

愛宕:本日は貴重なお時間をありがとうございました!

———————————————-

<編集後記>

これから複業を始める人も、すでに始めている人もやはり気になるのは「お金」の問題。”税理士”というと固いイメージを持っていましたが、実際に中野さんにお話をお伺いする中でとても話しやすく気さくな印象を受けました。どんな小さなことでも気になることは専門家に相談しながら、楽しんで複業を行う人が増えていけばいいなと思います。

コデアルが提供している副業確定申告シュミレーターもありますので、参考までによろしければご活用ください!正確な金額は毎年変わるため、士業の方にご相談ください。

関連した記事