2018.12.22

食と農×スポーツの両面で切り込んでいく、プロフットサル選手中井健介さんの複業スタイル

今回はプロフットサル選手として活躍する傍ら、複業として「中井農園」の農産物を使った加工品をの営業・販売をしている中井健介さんとの対談です。複業の経緯や複業することによる相乗効果、これからの展望について、即戦力複業の求人サイト「コデアル」を運営する、コデアル株式会社代表の愛宕より話をうかがいました。

(執筆・編集:鈴木麻理奈 / 取材:CODEAL愛宕)

「家族を手伝いたい」という思いが、フットサルと食を繋いだ

愛宕 まず、中井さんが複業を始めた経緯を教えてください。

中井 僕は出身が神戸の方なんですが、祖父は農家、父は中古車販売と、どちらも自営業だったんです。祖父の農園は現在兄が継いでいて、主にさつまいもや米を作っています。その背中を見ていたので、自分もいつか手伝いたい、力になりたい、という気持ちがずっとありました。それはサッカーを始めるよりも前からあったんですが、サッカーに出会ってサッカーの道に進みました。大学卒業時にフットサルに転向し、居酒屋でバイトをしながらフットサルの練習に励んでいましたが、興味の少ない仕事よりも自分のやりたいことを仕事にしたいと思い、農園の野菜を販売し始めたのが経緯です。
複業としてやり始めるようになったのは、「ストアーズ」にネットショップを開設して、勝手に野菜を売り始めたのがきっかけです。(笑)

愛宕 勝手にですか!(笑)

中井 はい。それまでは兄が地元の道の駅などに販売していたんですが、ほかにどこかで売れないかなと。少数のセットにしてネット販売したら思いのほかたくさん売れました。そこから、兄が生産しているさつまいもとお米を、私が営業として加工工場や販路拡大など生産・発送以外のことを行なっています。

愛宕 野菜の販売をフットサルの選手としての活動と絡めたきっかけはなんだったのでしょうか。

中井 農産物のネット販売を手伝っているという話が、所属チームのメインスポンサーに伝わり、「プレゼント企画」として「お米の俵セット」を観客にプレゼントすることになったんです。それが好評で、その後からホームゲームの時にはスタジアムグルメとして焼き芋やほしいも、甘酒などを徐々に販売するようになりました。

実は焼き芋を作る機械って15万円くらいするんですけど、やってみたら楽しそうかなっていう思いで、許可よりも先に機械を買ってしまって(笑)ホームゲームがある日は毎回軽トラを借りて、自分でその機械を運んで設置して…という感じでやっていました。

愛宕 先に15万円の機械を買っちゃうその行動力がすごいですね!(笑)ご自分でその機械を運んだりしていたというのも、ほかの選手たちからすると新鮮そうですね。

中井 スタジアムグルメを選手自らがプロデュースしたり持ち込んだり、ということはフットサルではほかに聞かないですね。今の所属チーム「ペスカドーラ町田」の選手たちは、プレゼントすると喜んでくれています。

甘酒はまだ販売再開しないの?や、干し芋好きだから早く作ってね、買うよ。など言ってくれるのは励みになります。干しいもや甘酒などは、市販のお菓子など添加物が入っているものではなく、間食として栄養補給として食べることができる物。自分が口にするものは気にしますし、そういう部分で興味のある選手には反応がいいです。

「勘違っている」からこそチャレンジし続けられる強み

愛宕 そもそも、フットサル選手になるのは将来の夢だったんですか?フットサル選手になった経緯は?

中井 小学校からサッカーを続けていて、夢はずっとサッカー選手でした。高校は名門校に入り、大学もサッカーの強豪校の大学に入りました。でも、僕は結構勘違いタイプなんですよ(笑)

愛宕 勘違いタイプというのは?

中井 下手なのにサッカー選手になる!プロになる!って夢みてたんですよね。高校でも大学でも、自分より上手い人はたくさんいて。だけどやっぱりサッカーを続けたくて、フットサルに転向してフットサルの選手になりました。思い込みでとにかく行動に移すタイプで、ここまできてしまったんですよね。

愛宕 それ、面白いですね。その考え方は起業家と気が合いそうな気がしますね!僕もそういう意味ではだいぶ勘違いしていると思います(笑)焼き芋の機械を先に買っちゃうとか、勝手にネット販売を始めたとか、そういうところも中井さんの「これならおもしろそう!」という勘違いや勢いで始まったんですよね。

中井 そうですね。「勘違っている」ということはチャレンジできることでもあるんですよね。

愛宕 そういう前向きな面はまさに中井さんの特徴でもありそうですね。選手として人に見られる立場であると思いますが、気をつけていることはありますか?

中井 SNSでは、ひとつひとつの発言やリツイート、引用リツイートなど、フォロワーが信頼できる自分が本当にいいと思ったことを発信しています。フォロワーとは時間をかけて信頼関係を積み上げていく意識は常に持っています。選手やサポーターの中にはさまざまな意見を持っている人がいるし、僕の発言によって炎上したこともあります。注目されているということを意識させられますね。

愛宕 フットサルの選手でSNSをやっているのはメジャーなんでしょうか?

中井 僕の所属するチームでは、5年ほど前に全員で発信しようと決めたある試合があったんです。あと1勝すればプレーオフ進出、という大事な試合を目前に控えていて、選手全員でTwitterで応援を呼びかけました。そしたら、当日の会場は満員!応援によって力がみなぎってくるような感覚で、スタッフもサポーターも選手も楽しかった、感動したと思える試合となり、応援の力ってすごい、と感じた印象的な試合でした。 それから、自分はSNSはずっと続けています。続けることで、ライト層だったサポーターがコア層になっていくのが見えるし、人とどんどん繋がっていきます。1番はあの大歓声の中で試合をしたいことです。

愛宕 コデアルも、Twitterつながりで人と繋がる機会が多いので、それはとても共感しますね。

複業が自分の価値を考え直すきっかけに。そして自分から周囲の変化へ

愛宕 中井さんのチームは複業やSNSなど、自由な雰囲気なんでしょうか。複業をしていることでのメリットはありますか?

中井 そうですね。チームは寛容な方だと思います。実際、僕が複業をやり始めてから後輩の子が別なことを始めてみたりとか、徐々にそういう動きは出てきていますね。やっぱり、個人として目立っていると企業やチームも引っ張られるところがあって。そういう相乗効果があることで、フットサル界も農業もどちらも盛り上がっていったらうれしいですね。

愛宕 相乗効果という面ではビジネスと似ているものの見方ですよね。

中井 自分で商売をしてみて、世の中の人にとって価値があるものが売れると気がつけたのはよかったと思っています。たとえば干し芋を売るにしても、その干し芋に価値がないと売れないのと同じで、選手も一つの商品。自分にはどんな価値があってチームにとって世の中にとってどんな価値があるのか。別の業界・目線で物事を見ることが出来たお陰で、知ることができたのだと思います。

愛宕 お話を伺っていると、中井さんは自分の見せ方をすごくしっかりと考えていらっしゃる感じがします。いろいろな面の中井さんがいると思いますが、ファンから見たとき、どういう風なやつだって思われていると思いますか?

中井 先ほども話しましたが、自分は勘違い、やって事故って…の繰り返しでここまできてるんですよね。みんながやらない、やろうとしないことをするキャラ設定ですかね。そのためにはフットサル界で縮こまっていたら意味がないなと思うし、自分を見て周囲の人たちが影響を受け、若い選手やサポーターの方々が盛り上がってくれたらと思っています。

今はこのキャラ設定ですが、自分の見せ方は会社の看板に合わせて個人の芸風も変えていくつもりです。

アスリートだからこそ、食や農の大切さを伝えていきたい

愛宕 これからの中井さんのビジョンについて教えてください。

中井 選手としての展望は、まずはFリーグで優勝、そして個人ではリーグMVPを獲り、日本代表に選ばれワールドカップに出場することです。また、フットサルの枠を飛び出していろいろやってみたいこともあります。自分の農園の野菜やそれを原料にした加工品に携わってみて思うのは、自分にとっていいものを作ると、周りの人やほかの人にとってもいいものだったりするんですよね。僕がハブになって、フットサル、サッカー選手はもちろん、ほかのアスリートにとって良いものを食や農の部分から提案していきたいと思っています。食事に敏感なアスリートだからこそわかる感覚を伝えていきながら、アスリートをはじめ、食や農に興味がある人に届けていけたらと思っています。

愛宕 貴重なお話、ありがとうございました!中井さんが活躍するフットサルの試合、観に行きますね!

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編集後記

「みんながやらないことをやろうとするキャラ設定」というところが、まさに中井さんのプレースタイルなんだろうなと思えたインタビューでした。これからも、まっすぐ自分のやりたい、やってみたいと思ったことに突き進み、道を切り開いていくのだと思います。これからの中井さんのご活躍がとても楽しみです!

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