2016.07.28

スタートアップの始め方とリモートワークとの付き合い方 :株式会社ホットスタートアップ取締役/開発責任者 香月様

本日は株式会社ホットスタートアップ取締役、開発責任者、香月雄介さんとコデアル株式会社CEO愛宕の対談です。

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愛宕 インタビュー本題に入る前に、御社のサービスについて説明いただけますでしょうか?

香月 ペライチというサービスを展開しております。誰でも簡単にWebページを作れるというサービスです。自分でスモールビジネスをされているセミナー講師の方や、個人事業主や、趣味で物販をされている方などが多いです。イベントページや結婚式のアルバム代わりに使っていただいたりもしています。実はメンタリストのDaigoさんの公式ページでも使用されているんですよ。

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参照:https://peraichi.com/

愛宕 ペライチの名前の通り基本1ページなのでしょうか?

香月 基本的には1ページですが、ペライチで複数のページを作って多階層のページのように見せることもできます。公開ページ数は23000ページ(2016年7月現在)になっています。

会社=本業でない時代が当たり前になる

愛宕 ペライチなど便利なサービスが出ていく中で、今は当たり前の生活がどう変わっていくのかお話しをお聞かせください。

香月 ペライチ関連でいうと、BとCの領域の境目が曖昧になっていくと思っています。メルカリでカジュアルにものが売れる世界になったりとか、商店街のおじちゃんおばちゃんでもホームページが作れたりするわけです。一般の人がインターネットでできることが増えて行くと思っています。

愛宕 楽天市場のページなんて難しいですからね。すでにスモールビジネスとして法人格でやっていることと個人でやっていることの境目が曖昧になってきていますよね。

香月 会社=仕事ではなくて、プロジェクト単位かなと思いますね。会社に属しているから本業ではなくて、いろいろなプロジェクトを持っていてもよくて、どれが本業でどれが副業かという区別をつける必要はないと思います。

愛宕 実際最近のYoutuberやメルカリの出店主を考えると、インターネットの力で複数のプロジェクトに関わることが当たり前になっているなと感じますよね。

まずは小さく始めよ

愛宕 ペライチのターゲットはどの層だったのでしょうか? こういったスモールビジネス関連のユーザーだと、いろいろな人がそれぞれの需要を持っていて、それぞれに対してターゲットしなければいけないと思います。

香月 最初は、アプリディベロッパー向けに作ろうとしたわけです。Google PlayやApple Storeからスクレーピングしてページができる機能を作ってテストしてみたら全然受けなかったんです。考えてみれば、アプリを作るような人って、自分で作るっていう発想が強いからなんですよね。

ページを作りたいけど作れない痛みを持っている悩みって、セミナー講師でも商店街のおじちゃんおばちゃんでも、お金が高いとか、難しすぎるとか、悩みはどんな人でも似通っていると思っています。本当に低リテラシー層に優しいサービスを提供するという部分は最初から一貫して持っていますね。

愛宕 スモールビジネスを始める時に、ペライチみたいなもので簡単にサービスを検証できるのはいいですよね。アナリティクスの機能もありますし。例えば弊社の場合は最小限の機能のプロダクトを作ることを心がけているので、魅力に感じます。

香月 リーンスタートアップですよね、社長も私も良くその系の本を読みます。Twitterでターゲットになりそうなユーザーを検索して一人一人に、プロトタイプを作っていてテスト中なのでホームページを作らせてもらえませんか? と言ってそれでいいかのテストをしていましたね。思いのほか反応が良くてその方向に舵を切りました。

採用力の強い会社はリモートワークを取り入れることができる

愛宕 どういう風に開発・ミーティングは進めていくのでしょうか?

香月 基本的には機能開発の優先順位は大局的に事業インパクトの高いものを経営陣で決め、バグはユーザーサポートで貯めています。

愛宕 開発はアジャイル的なやり方になってたりしますか?

香月 今はなっていなくて、というのも、開発チーム9人のうちフルコミットメンバーが2人だけなので、この日にスクラムのミーティングをやろう、っていうのがなかなかできないんですよね。よくないとは思いますけど、僕が全部ハブになって進捗管理しています。

愛宕 そうですよね、ハブとなっているフルタイムの人間が役割を果たさざるを得ないですよね。では今はあまりコード書かれていないということなのでしょうか?

香月 いや書いてます。離れるのが怖いんです。書かなくなるとプロダクトと離れてしまうような気がして。

愛宕 僕もプロダクトオーナーなんで分かる気がします。最新の機能がどうなっているかパッと言えない感じが怖いですよね。プロダクト命なので、無理して営業していかなければいけなくなりますしね。

タスクはどういう風に振られているのでしょうか?

香月 人によって分けていますね。仕様を明確に書くべき人とそうでない人がいますし、手離れのいいタスクとそうでないタスクがありますよね。バグとかリファクタリングや、緊急性のないタスクを稼働時間の短い人やリモートの人に振るようにしています。新機能開発って、すごい議論しないとなかなか詰まらないし、そもそも作らない結論になることもありますから。

愛宕 それうちとすごく似ていて、よくわかります。ただこう言う仕組みって流派があるみたいで、会社によっては絶対常駐文化のあるところもあります。

香月 うちの強みは採用力なので、カジュアルに手伝ってくれる人が多いからですね。コワーキングスペースで知り合ったら参加してもらうとか、来るもの拒まずの文化があります。稼働が中途半端の人も出ますけど、それはそれでいいのかなと思っています。

愛宕 もっと関わってよ、っていうのなら事業をグロースされていなきゃいけないというのもありますしね。

エンジニアとして成長したいならオープンにソースコードをあげよう

愛宕 香月さんご自身は新卒正社員からフリーランス、CTOといったキャリアとのことですが、それぞれの良し悪しなどお話しできますでしょうか?

香月 まず正社員で良かったのは、ほぼ初心者のエンジニアだった私が、経験者のいる環境でプログラミングができるというところですね。成長スピードが違うと思います。デメリットを言えば全部自分の自由にできるわけではない、という部分ですね。

愛宕 新卒の経験のない時にリモートワークをしたり、複数のプロジェクトの掛け持ちは向かないと思っています。そういうのはある程度の経験値が必要だなと思います。

香月 プログラマーとしての能力だけでなくて、1社会人として、仕事の作法やビジネス人格が形成されるという意味で、会社に新卒で入ったことはいいと思いますね。

個人事業主になってよかったのは、通勤電車に乗らなくて良くなったことですね笑 それと個人的にですけれど、そもそも一人が好きなので、黙々と一人で作業できるのがいいです。デメリットは人間として堕落しやすいことですね。夜寝るのがだんだん遅くなって、朝起きるのが昼くらいになっていきます。セルフマネジメントができない人はすぐに堕落しますね。そして寂しいです笑 一人が好きっていうのと矛盾しているんですけど、人を渇望するようになってきます。精神的にヘルシーでなくなります。

別の話ですが個人事業主には文章力が重要だと思いますね。リモートワークになる人が多いと思いますけど、Slackなどでのコミュニケーションは文章力に全てがかかってるので。文章力がないと全然伝わらないんですよ。

愛宕 個人事業主はセルフマネジメントが最重要になってきますよね。

香月 少人数でスタートアップをしていてやりがいを感じるのは、一番はチーム感ですよね。チームで一つのプロダクトをみんなで作って、一緒に喜べるということがいいですね。正社員の時にはない感覚でした。もともと創業メンバーが3人なんですけど、いい意味で部活のようなノリがあるのがいいです。

愛宕 そういう意味では、僕は気を遣ったことがあって、とても仲のいい親友とは仕事をしないようにしています。言うべきことを辛くても言えるような距離感が欲しいですね。それでいて仲のいい人が欲しいですね。

香月 そうですね、一緒にやっていてどうしてもいいづらいことが出てくるので、すごい小さなことだとしても溜まっていきます。そのためにいいtipsがあるんですよ。役員ミーティングを月一くらいで北関東あたりの景色のいいコワーキングスペースに行くんです。言いづらいことを互いにいう場をルール化しています。

逆に経営者という面で辛いのはプレッシャーですね。投資を受けている事もあり、結果を出せないと意味がないのでそういう意味ではプレッシャーを感じています。スタートアップという比較的裁量がある面では非常にやりがいを感じていますが、権限と責任は比例すると考えていますね。

愛宕 権限が大きいのに責任が小さいっていうのはないですよね、ハイリターンならハイリスクになるように。今のお話をお聞きすると、力つけたければ会社入って働くというのもいいかもしれないし、自己管理できるならフリーランスやCTOのキャリアも選んでみるといいかもしれないですね。

最後にですが、他のメンバーではなくホットスタートアップのメンバーたちと仕事をしている理由はありますか?

香月 人とタイミングですよね。一人で会社を成功させる事ができるのは、ほんの一握りの天才だけだと思っていて、創業は3人でやるのがいいと思いますが、スタートアップの創業メンバー探しってすごく大変なんです。

会社を始める時に代表の橋田について感じたのが、彼には相当巻き込み力があったことなんですよね。自分にないものをすごく持っているなと思いました。山下とは直接の知り合いではなく橋田を介して出会ったんですが、会話する中で尊敬している人が共通している事がわかりすぐに意気投合しました。田坂広志さんというシンクタンクの代表をされている方なんですが、合宿に行った時、たまたま山下のカバンから田坂さんの著書が出てきたんです。

そして橋田がたまたま田坂さんと繋がっていて、得意の巻き込み力で合わせてくれた時はドキドキしました。

愛宕 お話を聞いていると、皆さんどこかしらの共通点はあるけれども、それ以外は全然違うんですね。一緒だったらビジネスを一緒にやる必要ないですもんね。

香月 そうですね。橋田と話していると性格が正反対でイラッとすることばかりなんですよ。それでも仕事の面では自分にない強みを多く持っていてリスペクトする事が多く、仲良くやれていますね。

愛宕 最後に何かエンジニアへのメッセージなどありますか?

香月 今後のエンジニアのキャリアについて考えたことがあります。正社員にせよ、フリーランスにせよ、エンジニアとしての自分の価値を向上させるには、GitHubでもQiitaでもオープンソースいいですが、表に自分の書いたソースコードをあげていくことが大切だと思うんですよね。新しい情報が入って来やすくなるし、コミットや実績もアピールできるので。今正社員やっている方もそういうことをしていくと良いと思います。

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